恋の行方


「…き」
「聞こえないよ」
「…好き」

やっと来栖さんに届くほどの声量だった。
恥ずかしさから、顎を引いて上目遣いになった私の顔を、これ以上ないんじゃないかって思うほど破顔させて覗き込んでくる。

「…どんな風に?」
「どんなって…」
「どんな風に俺の事好きなの?」

優しくまったりとした口調であるにも関わらず、なぜか迫力がある。

「わ、わかんないよ。そんなの…そんな難しい事聞かれても」

来栖さんは絶対に意地悪だ。
どうして、こんなお兄ちゃんと正反対の人に側にいて欲しいと思ったんだろう。

「…キスしもていい?」
「えぇっ?な、なんで、キ、キスなの」

キスの単語に動揺する私の頬に、来栖さんの右手が優しく触れた。

「いい?」
「うぅ~」

一応、私の許可を得ようとしているけど、私には拒否権はないと確信した。

来栖さんの顔がゆっくりと近づいてくる。
それが恥ずかしくて、目をギュっと閉じた。


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