恋の行方
彼と私


後日、学校から帰宅した私が玄関の鍵を開けている時。
背後で来栖さんの艶やかな声が私の名前を呼ぶのが聞こえて振り返る。
そこにはニッコリ微笑んだ来栖さんが立っていた。

「来栖さんっ!…ど、どうして」
「どうして?…それって答えなきゃわからない?」


あんなふうに告白をしてキスをされそうになって、しかもその全てをお兄ちゃんに見られていたという羞恥を抱えたままだった私は来栖さんに会うのも躊躇われるほどだった。

それなのに突然来栖さんが現れたりするから、そんな反応になってしまったっていうのに、来栖さんは不満そうな態度を惜し気もなく披露している。

なのに私に歩み寄ると「この前の続きをしに来たんだよ」と、溶けてしまいそうな程の熱い声で耳元に囁くもんだから、私は腰の力が抜けていく。

そんな私を抱き寄せて、クスリと笑いながら顔を寄せてきた。


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