恋の行方


「私、今までお兄ちゃんがいればいいと思ってたし、誰かを好きになるなんて思ってもみなくて…だから、こうゆう事するなんて考えた事なかったから…」
「……」
「あ、あの…来栖、さん?」

何も言わない来栖さんに、怒ってしまったんじゃないかって不安になって、恐る恐る見上げてみる。

でも来栖さんは怒ってるって言うより何かを考えてるって感じで、唇をキュッと引き結んで目を伏せていた。


「…わかった。もう少しだけ待ってあげる」

少し間を置いた来栖さんの答え。


「ごめん、なさい…」
「…今日はこれで、許してあげるよ」

溜息交じりに言いながら私の手を取ると、掌にキスを落とした…と言うより、吸い付いて、あげくに舌で舐めた。


その感触がゾクリと背筋を振るわせる。
そして舐められた事と感じてしまった事の恥ずかしさで、私の脳内が完全にショートした。


抗議しようにも金魚みたいに口をパクパクと動かすだけで声が出ない。


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