恋の行方


「こんな事なら、あの時邪魔されてもキスしとけばよかったな」

真っ赤になってしまっているだろう顔を隠す為に俯いた私の耳に苦笑交じりの声が届く。


そんな来栖さんに『キスしたいと思ってくれるのは、私の事が好きだから?』と聞いてみたい衝動に駆られたけど、恐ろしくて聞けそうにない。

きっと『今さらそんなわかりきった事を聞くの?』って、目を細めた感情のない顔で言われて、私は追い詰められていくような気がするから。

「…来栖さんは、いつから私の事が好きだったの?」

代わりにというわけじゃないけど、来栖さんが好きだと言ってくれた時から疑問に感じていた事を口にする。

「…知りたいの?」

当然の疑問をぶつけただけなのに、来栖さんは「どうしても?」なんてニヤニヤ笑ってなかなか教えてくれない。

「じゃあ、いい。来栖さんの意地悪っ」

私が拗ねてみせるとあっさりと降参された。

実はこんなに簡単に降参するとは思わなかった。
だって来栖さんって本当に意地悪だし、こういう態度の時は絶対に教えてくれなさそうだったから。


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