恋の行方


「澪ちゃん、今度必ず、この前の埋め合わせするからね」

そう言いながら、私の頭に手が伸びてきてフワリと乗せられた。
その仕草に、頬が勝手に緩んで笑みが零れる。

そして思う。
私はこの手が好きなんだって。

優しく私の頭に乗せられるその手は、お兄ちゃんの手と似ているようで全然違う。

安心と嬉しさと心地よさを感じるのは2人とも同じだけど、来栖さんの時にだけ感じるこの胸の高鳴り。
ドキドキして体温が上がって、それでも触れていてほしいと切望してしまう。

きっと始まりはこの手なんだって確信のようなものが私の中に浸透していく。


「今度、約束破ったら絶対許さないから」

怒ったように口を尖らせる私を「わかってる」と微笑んで抱き寄せる。

本気で怒っていたわけじゃないけど、それだけで全てを許してしまいそうになる。
来栖さんに擦り寄って背中に腕を回したところで、ひとつ思い出して「あっ」と小さく声を上げた。


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