君に届け



「は…?」



あたしには、池澤が当たり前っていう理由がわからなかった。



「俺がしたことって、お前の話し相手になったり、数学教えたりしたことだろ?当たり前じゃんか。だってさ、それが俺の仕事なんだし…」



池澤は言い終わると部屋のドアを開けた。



「お前がどう思ってるかは知らないけど、俺は当たり前だって思うから。礼なんていらないよ。」



そう言って部屋の中へ入っていった池澤を、あたしは追う。



「アンタ変だよ…」



部屋に上がって一番最初にあたしが口にした言葉はそれだった。



「教師って、授業やってみんなに勉強教える仕事でしょ?」



少なくとも、あたしはずっとそう思って生きてきた。



先生なんて…
そんなものなんだと。



「…そうかもな。」



そんなあたしの言葉を、池澤は否定しなかった。







< 100 / 282 >

この作品をシェア

pagetop