君に届け
「は…?」
あたしには、池澤が当たり前っていう理由がわからなかった。
「俺がしたことって、お前の話し相手になったり、数学教えたりしたことだろ?当たり前じゃんか。だってさ、それが俺の仕事なんだし…」
池澤は言い終わると部屋のドアを開けた。
「お前がどう思ってるかは知らないけど、俺は当たり前だって思うから。礼なんていらないよ。」
そう言って部屋の中へ入っていった池澤を、あたしは追う。
「アンタ変だよ…」
部屋に上がって一番最初にあたしが口にした言葉はそれだった。
「教師って、授業やってみんなに勉強教える仕事でしょ?」
少なくとも、あたしはずっとそう思って生きてきた。
先生なんて…
そんなものなんだと。
「…そうかもな。」
そんなあたしの言葉を、池澤は否定しなかった。