君に届け
「池澤…?」
料理の味に悩んでいると、幸村がキッチンにやって来た。
幸村は、目を擦りながら眠たそうに歩く。
「おぉ、おはよう。」
「うん…」
「一応料理したけど…これ、食べる?」
そんなに美味しい物でもないし、ここは幸村の判断に任せよう。
そう思って俺は聞いた。
「…うん。」
さっきから『うん』としか言ってない気が…
まだ寝ぼけてる?
「そっか…じゃあ、」
「池澤…」
「ん?」
名前を呼ばれ、返事をすると、幸村は俺の方へと歩いてくる。
どんどん近付く距離。
「……!!」
一瞬、自分の身に何が起こったのか理解出来なかった。
気付けば、俺は幸村に抱き付かれていた。