君に届け



「池澤…?」



料理の味に悩んでいると、幸村がキッチンにやって来た。



幸村は、目を擦りながら眠たそうに歩く。



「おぉ、おはよう。」



「うん…」



「一応料理したけど…これ、食べる?」



そんなに美味しい物でもないし、ここは幸村の判断に任せよう。



そう思って俺は聞いた。



「…うん。」



さっきから『うん』としか言ってない気が…



まだ寝ぼけてる?



「そっか…じゃあ、」



「池澤…」



「ん?」



名前を呼ばれ、返事をすると、幸村は俺の方へと歩いてくる。



どんどん近付く距離。



「……!!」



一瞬、自分の身に何が起こったのか理解出来なかった。



気付けば、俺は幸村に抱き付かれていた。






< 111 / 282 >

この作品をシェア

pagetop