君に届け
訳わかんない…
これが、真っ先に俺の頭に浮かんだことだった。
幸村を振りほどくことも出来ず、ただそのまま突っ立っていた。
「幸村…?」
抱き付いたまま離れない幸村に、俺は声をかける。
「大丈夫…か?」
返事はない。
けど、幸村の手の力がさっきよりも強くなった。
「池澤…」
「どうした…?怖い夢でも見たか?」
この状況で抱き付かれる理由がわからなかった俺は、とりあえず聞いてみた。
「…嫌。」
「ん?」
「思い出したくない…」
幸村の言葉を聞いて、俺はそれ以上は思い出させない方がいいと判断した。
「そっか…思い出したくないなら、無理に話さなくていいから。」
きっと、さっき話してたお母さんに関することだと思う。
何の記憶かは知らない。
俺は幸村の担任でもない部外者だし、幸村の家庭についても何も知らない。
でも…知らないなりに、出来ることはあると思う。
俺はそっと、幸村の頭に手を置いた。