君に届け
あたしは、さっきとは別の意味で家に帰りたくなくなっていた。
明日学校で会えるのに…
別れるとなると寂しい。
池澤の運転する横顔を見ながら、あたしはそんなことを思っていた。
「家、どこ?」
「近くのマンション。ほら、見えるでしょ?あれ…」
あたしは、信号で止まった車から自分のマンションを指差した。
「え?あれなの?随分近くに住んでんだな…」
「うん…」
池澤の家に行こうと思えばすぐに行ける距離。
自分でもびっくりだよ…
そして、あっという間にマンションの前に着いた。
帰らないと…
「待って…」
あたしが車のドアに手をかけた時、池澤があたしを止めた。
池澤は、自分のポケットからペンを取り出した。
「えっと…なんか紙ある?」
紙…?