君に届け
何かを書きたいようだ。
あたしは、通学鞄からメモ帳を取り出し、1枚ちぎって池澤に手渡した。
「ありがと。」
メモ帳を受け取ると、何やらスラスラと書き始めた。
「はい。あと…これも。」
書き終わった紙と、またポケットから取り出した鍵を渡された。
「……?」
「俺の連絡先と、部屋の合鍵。お前に持ってて欲しい。」
「池澤…」
「帰ったら連絡して。それと、お母さんともちゃんと話せよ。」
「うん、わかった…」
「また明日な。」
無言で頷いたあたしを池澤は優しく抱きしめた。
「池澤…?」
「はぁ…俺、大人げないな。お前と離れるんだって思うと、すごい寂しい…」
あたしだって…
同じ気持ちだよ?
この腕にずっと、抱きしめられてたいって思う。
「なぁ…?」
「…ん?」
池澤は、あたしを抱きしめたまま耳元で呟いた。
「大…好き。」