君に届け
それだけ言って、池澤はあたしから手を離す。
目を閉じて、一回深呼吸をする池澤。
「あたしも…好き。」
そんな池澤に向かって、あたしは呟いた。
「じゃあ…ね。」
これ以上ここにいるともっと別れるのが辛くなりそうで、あたしは車から出た。
そして、あたしが住む部屋へと歩いていく。
後ろを振り向くことはしなかった。
エレベーターまでたどり着いて、やっと立ち止まる。
「はぁ…」
「…穂波?」
エレベーターが来るのを待っていると、後ろから声がした。
この声…!