君に届け



さらに珍しく、彼女が酔っ払っている様子はない。



お酒飲んでない…?



「…うん、まぁね。友達も出来たし。」



「そう…」



「ちょっと…話あんだけど、いい?」



池澤にお母さんと話せって言われたし…



お酒も入ってないし、他の男が来る様子もない。



絶好のタイミングだと思い、あたしは話を持ちかけた。



「何の話?」



彼女は話を聞いてくれるみたいだ。



あたしは部屋を開け、とりあえず中に入る。



「あたしさ…」



「ん?」



こんな風にお母さんと話をするのは、何年ぶりのことになるんだろ…



「学校でね、すごい変わった教師に会ったの。

今まであんな奴みたいな教師、見たことないってくらい生徒思いの奴でさ。

入学式サボってから仲良くなって…

いつの間にか、あたしにとってそいつ…池澤が大切な存在になってた。」



お母さんは、あたしの話を黙って聞いていた。






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