君に届け
さっき、あたしに会いに来たって言ってたよね…?
「穂波さ、受験がどうとか言い出した時からあそこに来なかったし…元気かなって心配だった。」
あそこ…
侑隼たちとつるんでた時によく行った倉庫のことだ。
「やっと会えた…」
侑隼が呟く。
侑隼たちとは、受験を機に縁を切った。
しかも、あたしは侑隼に住所を教えた覚えはない。
なのに…
「なんで…?」
近付く侑隼に、あたしは後退りながら尋ねる。
「ここの住所?お前の知り合いに聞いたんだよ…」
誰に…?
あたしの知り合い…?
住所を知ってる知り合いなんて、思い当たらない…
「侑隼…やめて。」
あたしは、早く学校に行きたい思いでいっぱいだった。
池澤…助けて!
「穂波…警戒するなよ。俺は何もしない。ただ、お前に会いたかっただけだから…」
そう言うと、侑隼は足を止めた。