君に届け



早く帰らないと綾芽が心配しちゃうしな…



あたしは、メールの返事を見ることなく、携帯の電源を落としてトイレを出た。



「幸村!」



トイレから帰る途中、後ろから声をかけられた。



「葛城先生…」



誰かと思い振り返ると、そこには葛城先生がいた。



「おはよう、幸村。昨日は散々イケに自慢されちゃったよ…」



葛城先生はそう言うと、笑みを浮かべた。



「随分イケも明るくなったし、俺としてはやっと落ち着けるって感じだな。」



「そうですか…?」



「でも、さっき会った時は拗ねてたけど…早速喧嘩でもしたの?」



葛城先生と話しながら教室までの道を歩いていた時、そんなことを言われた。



「いや…喧嘩ってそんな大それたもんじゃないんですけど…」



池澤、さっきの一言を相当引きずってるな…



「まぁいいや。幸村、せいぜいイケと仲良くな。ほら、教室入って!HR始めるぞ♪」



どうやって説明したらいいのか考えてるうちに、あたしは葛城先生に背中を押され、教室に入った。






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