君に届け
目指すは職員室。
階段をかけあがり、あたしは道を急ぐ。
「幸村…」
急ぐあたしの目の前には池澤の姿。
「あ…」
「矢野から聞いた?」
「うん…」
途切れ途切れの会話。
2人の間に沈黙が続く─
「俺がこんなことを言うのも何だけど…幸村、1限サボれる…?」
しばらく続いた沈黙を破ったのは池澤。
「お前…元気ない。だから…心配。」
「池澤…?」
元気ない?
あたしが…?
侑隼の姿が脳裏に蘇る。
「そんなこと…ないよ。あたしはいつもと一緒。全然元気だし。」
侑隼のことを思い出してしまう自分が嫌─
あたしは無理に笑顔を作り、池澤に向けた。
でも、池澤にはそんな小細工は通用しなかった─
黙ってあたしの手を取り、階段を登り始める。