君に届け
「ちょっと…」
あたしの手首を掴む池澤の力が、結構強くて痛い…
それでも池澤は離してくれなくて、黙々と階段を登り続ける。
着いた先は…
「屋上…?」
ここは本来、生徒が入ってきてはいけない場所。
池澤はあたしの方を見ることもなく、屋上のドアノブを持ってドアを開け、屋上に出た。
なんか怖いよ…
「池澤…」
恐る恐る声をかける。
今の池澤は、あたしの知ってる人じゃない─
「…怒ってる?」
今朝のことならちゃんと謝るから…
「ねぇ─」
「幸村…お前、何かあっただろ?」
えっ…?
「昨日と顔が違う…俺にはちゃんとわかる。」
池澤はそう言うと、あたしの手首を掴んでた手の力を緩めた。
そのまま離してくれるのかと思ったら、池澤はあたしの手を引っ張った。
「……!!」