君に届け
抵抗する暇もなく、あたしはそのまま池澤の胸の中─
「な、なに…?」
「俺には…言えないの?」
そう言って、池澤はあたしをギュッと抱きしめる。
どんな顔してるのかはここからじゃ見えない…
「お前が元気ないと…俺まで落ち込むんだけど。」
「…何言ってんの?あたしは元気だよ…」
「嘘つき…」
「…」
いつも通りに振る舞ってるつもりだった。
今朝、侑隼に再会した時の気持ちを表に出したつもりはない。
でも…
池澤にはわかるのかな?
隠しきれないや…
「あの…ね、」
「ん?」
あたしは今まで、自分の過去について他人に話したことは一切ない。
上手く伝えることは出来ないかも知れない。
「あたし…」
ユウト─