君に届け



「……!」



昔の自分の声が、耳の奥で聞こえた気がした─



「幸村…?」



池澤が身体を離し、心配そうにあたしの顔を覗き込んでいる。



ユウト─



まただ…
なんであいつの名前を呼ぶの…?



あれは過去。
今の大事な人は、目の前にいる人なのに…



「大丈夫か…?」



ユウト─



違う…
もう好きなんかじゃない…



「おい、幸村!!」



「違う…」



「えっ…?」



あんな奴…



ダイキライ─



「…っ…うぅ…っ…!」



「え…幸村、どうしたんだよ…なんで泣くの…?」



「…うぅ〜…池澤ぁ〜…」



何故か溢れる涙。
あたしは子供のように泣きじゃくり、池澤に抱き着いた。







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