君に届け
急に真面目な顔をして、そんなことを言う池澤。
「どうしたの…?」
「もう嫌だから…大切な人が目の前からいなくなるのは─手が届かない所に行っちゃうのは─」
池澤はあたしを抱きしめながらそう言った。
「…約束するよ。池澤、あたしは遠くに行ったりしないから…安心して?」
あたしにとっても、池澤は大切な人なんだ…
だから側にいるよ…
ずっと。
「ありがと、幸村…」
「うん。でもその代わり、池澤も離れないでね…?」
「バカ…当たり前だろ?さっき守るって約束したばっかじゃん…」
そう言って、池澤はさっきまでの不安そうな顔とは一変した、いつもの笑顔をあたしに向けた。
この幸せがいつまでもずっと続いて欲しい…
池澤の笑顔を見ながら、あたしはそう思った。