君に届け
思いもよらぬ名前が綾芽の口から飛び出した─
「て…てら…だ?」
なんで綾芽が侑隼のことを知ってるの…?
「うん。今男子見て思い出したんだけど、中3の時同じクラスだったんだよね…」
そういえば…
綾芽は侑隼と同じ中学出身だった─
「何て言うか、すっごい不良だったなぁ…私は話したことないけど、他校の人にも知り合いいるって聞いたから…穂波は知ってる?」
「し…知らない。」
ここは知らないふりをしておこう。
そう思って、あたしは動揺しながら答えた。
「そっか、知らないかぁ…いや、別に知らなくてもいいんだよ。ごめんね、急に変な質問しちゃって…」
綾芽はあたしの返事を聞いて、曖昧に笑いながら、鞄から数学の教科書を取り出す。
一体なに…?
さっきのやり取りで、あたしの中に綾芽に対する不信感が芽生えた。