君に届け
葛城先生の後ろ姿を見送ってから、あたしは鞄を持って教室を出た。
目指すは中庭。
あそこに行くのはもう何度目だろう…?
すっかりお馴染みの場所になってる気がする─
「遅い…」
あたしが中庭に着いた時にはもう既に池澤がいた。
「ごめん…」
池澤の隣に座って謝る。
「ったく…先輩、HR長過ぎ!」
そっち…?
あたしはそうでもないと思うけどな─
池澤が早く来過ぎてたんじゃないのかな…?
なんて、そんなことは言えないけど。
「部活あるから手短に言うな。」
そう前置きして、池澤はポケットから鍵を取り出した。
「……?」
「なるべく早く帰るから、俺の家に行ってて…」
鍵をあたしの手のひらに乗せて、池澤は言った。