君に届け
「え…?」
あたしは一瞬、池澤の言っていることが理解出来なかった。
「あの…侑隼って奴のことがあるし、本当は一緒に帰ってやりたいんけど…ごめんな─」
「いいよ。池澤はみんなの先生なんだもん…帰るくらい1人で大丈夫だよ♪」
本当は侑隼の存在が怖くて仕方ない。
一緒に帰って欲しい…
でも、それは出来ない。
池澤はあたしの彼氏である以前に、みんなの先生なんだもん─
あたしは渡された鍵を握りしめて、池澤に笑顔を見せた。
作り笑い─
きっと池澤は気付いてる。
「じゃあ…帰るね。部活頑張って。」
「あぁ…気を付けてな。」
池澤はそう言うと、手を振って走って行った。
「はぁ…」
帰ろ…。