君に届け

余裕な笑み




学校を出たあたしは、いつも通る道を早めに歩いて行く。



今のところ、侑隼の姿は見えない。



このまま池澤の家まで行ければいいけど…



でも、そんな希望は叶うことなく散った─



「………。」



「…また会ったな。」



赤信号で止まったあたしの耳元で聞こえる声。



「……!!」



「1日に2回も会うなんて…偶然かな、穂波?」



そこには今一番会いたくない人、侑隼がいた。



こんな時に限って信号は青にならない…



青になってよ…
早くここから、侑隼から離れたい─



あたしの願いが通じたのか、信号が青になる。



その瞬間、あたしはダッシュで走り出した。







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