君に届け
職員室に着いた俺は、帰る支度をする。
予め先輩に頼んで、他の先生方には早退することを伝えてもらっていた。
先輩曰く、俺は病院に行くことになっているらしい。
さっきまで部活やってて、かなり元気なのにな…
今日は会議の予定もないから大丈夫だろうけど、少しの罪悪感がある─
俺は言ったら先生方を騙してる訳だしな…
この借りはまたいつか、必ず返そう…
そう思い、俺は荷物を持って職員室を後にした。
「池澤先生!」
駐車場に行こうとして階段を降りていたその時、後ろから誰かの声がした。
「矢野…?」
振り返ってみると、そこには幸村の友達の矢野 綾芽が立っていた。
「先生これから帰るの?」
「あぁ…ちょっと用事があって帰るんだ。お前は?」
「池澤先生を待ってた…」
矢野はそう言うと、小さな紙切れを俺に手渡した。