君に届け



もうダメだと思った時、光と共に声がした。



「綾芽…?」



開け放たれた倉庫の扉の所に立っていた人は─



あたしに初めて出来た友達、綾芽だった。



「お前が侑隼か…?」



綾芽の姿を確認した後、また声がした。



この声は…!



「てめぇ、俺の幸村に手ぇ出す気か?許しちゃおけねぇな…」



「池澤…」



綾芽の後ろから姿を現したのは、池澤だった─



「くっ…おい綾芽、何故そいつを連れて来た?」



えっ…?



侑隼はさっき、綾芽を下の名前で呼んだ…?



「寺田くん、もうやめて…穂波を傷付けないで…」



「は?お前は俺の計画に一枚噛んだじゃねぇか…穂波のことを観察する為のスパイ役としてな。そんなお前が今更何言ってんだよ…」



スパイ…?
綾芽は侑隼に送り込まれたスパイだったの?



あたしと友達になろうって笑ったのは嘘…?






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