君に届け
我慢してた涙が、関を切ったように溢れ出した。
綾芽が…そんな…
「確かにそうだったよ。寺田くんに頼まれて、私は穂波の観察役をした。でも…嫌になったの。」
「………………」
「穂波の楽しそうに笑う姿を見て気付いたの。こんなことして…いいのかなって。私は…穂波を裏切ってるのが辛かった…」
綾芽…
「だから、穂波を助けに来たの。今更私に何が出来るって訳でもないから…池澤先生にも来てもらった。」
「侑隼、てめぇは最低な奴だな。2人の女の子を泣かして…それでいいのか?満足か?」
侑隼は、綾芽と池澤の言葉を黙って聞いていた。
でも突然…
「あははは…最低?俺が最低だと?てめぇみたいな奴に何がわかる?」
開き直ったように笑うと、綾芽と池澤がいる方に歩み寄った。
同時にあたしの近くにいた3人の男も動き出した。
「……っ!」
そのうちの1人が、ナイフをあたしに突き付けてきた。
「俺を最低呼ばわりした罰だ。大事な彼女が、お前の代わりに死ぬぞ?」