君に届け
「幸村!!!」
「おっと…行かせる訳にはいかねぇな。黙ってそこで見てろ!」
侑隼はそう言うと、池澤を殴った。
「寺田くん!」
「侑隼、やめて!!」
あたしはいい…
でも、池澤を傷付けることは許さない。
そう思い、あたしは声の限り侑隼に叫んだ。
「黙れ!!」
侑隼の返事を聞く間もなく、あたしは男にナイフで頬を切り付けられた。
「…………!」
「穂波…それ以上傷付きたくなかったら、静かにしててくれるかな…?」
侑隼はあたしを見て言った後、池澤の方へと近付いていく。
「…やめて!!」
そんな侑隼の後ろ姿に、あたしはもう一度叫んだ。
「静かにしてって言ったよね…?俺の言葉の意味、わからなかった?」
「わかってる…でも、池澤を傷付けることは許さない…お願い、やめて。」
「そうだよ、寺田くん。こんなことして何になるって言うの…?もう…やめようよ。ね?」
綾芽はそう言うと、侑隼と池澤の間に立った。