君に届け
「綾芽、危ない…っ!」
綾芽の危機を察し、あたしは叫んだ。
それでも綾芽はそこを動かず、池澤に向かって何か言っているようだ─
最後に池澤の口が『矢野』と動いたのを、あたしは見逃さなかった。
「おい、侑隼!もうやっちまっていいか?」
ナイフを持っている男は、痺れを切らしたのか侑隼にそう問いかける。
「あぁ…そいつをやればこの2人も黙るだろ。やっちまえ。」
「わかった。」
男は侑隼の返事を聞き、にやっと笑った。
「…お前の大事な人たちが見てる前で刺してやるよ…!!」
男があたしに向かってナイフを振りかざす。
光に反射して、ナイフがきらっと光った。
もうダメ…
そう思って、あたしは力を入れて目を閉じた─
「………!!!!」