君に届け
「て…めぇ…!」
刺されたと思った。
でも、痛みは襲って来ない─
代わりに聞こえた男の声。
あたしは恐る恐る目を開けてみた…
「…!!」
あたしの目に見えたのは、あたしとナイフを持った男の間に入って、素手でナイフを握りしめる人─
「…幸村、俺…言ったよな?お前を…守るって。」
「池澤…!」
さっきまで侑隼と綾芽の後ろにいた池澤だった─
ナイフを持った男も予想外の出来事に目を丸くしている。
「この命にかえても…お前だけは絶対守ってみせる。」
池澤はそう言って、ナイフを握る手に力を入れる。
手から腕を伝って流れる真っ赤な血─
「なんで…なんでそこまで出来る?1人の人間を守る為に命をかけて…」
「なんでだろ…?俺にもよくわかんねぇんだよ…」
侑隼の問いにそう答えると、池澤はあたしの方を向いて笑いかけた。
「……?」
「強いて言うなら…その人を大切に思う気持ち…かな?」