君に届け
怪我してるのに、そんなことは関係ないかのように笑う池澤。
その姿に、あたしは目に涙を浮かべながら小さく頷いた。
「寺田くん…あなたには先生の気持ち、わからないかも知れない。でも…」
綾芽はそう言って池澤を見つめる。
「俺だって幸村に出逢ってわかったから…お前にもいつか、わかる時が来るはずだぜ…?」
池澤は綾芽の言葉の続きを言って、侑隼を見た。
「お前ら…何なんだよ…」
侑隼は訳がわからないと言うような顔で、開いていた倉庫の扉へ歩いて行き、姿を消した─
ナイフを持った男も、侑隼の後を追っていった─
「はぁ……」
侑隼たちの姿が見えなくなった後、力が抜けたように座り込む池澤。
「池澤…大丈夫?」
あたしは、池澤の怪我の具合を見ようとした。
ナイフが刺さったままの池澤の左手は、すごく痛々しい状態だった…