君に届け

病院




病院に着き、池澤はすぐに処置室に案内された。



残されたあたしと綾芽は、待合室で待機─



「穂波…」



しばらくお互い無言で座っていて、先に口を開いたのは綾芽だった…



「今更だけど…本当にごめんなさい。私…穂波を裏切ってた─」



「綾芽…」



やっぱりそうだったんだ…



でも、池澤と一緒に倉庫に来た後、綾芽が侑隼に言った言葉を思い出す。



『嫌になったの…』



綾芽は、どこかであたしのことを友達だと思ってくれてたの…?



「寺田くんとは、中学2年の時から一緒のクラスで…あんまり関わることはなかったけど、高校に入る前に街中で偶然会って…」



綾芽によると、その時の侑隼は悲しげな表情をしていたらしい。



いつものような、恐々しい様子ではなく、何かを失ったような喪失感を侑隼から感じた…と。



可哀想に思った綾芽は、勇気を振り絞って侑隼に声をかけた。



「そしたら…穂波の存在を明かしてくれたの。俺があんなことしなかったら、穂波は側にいてくれたかもなって、そう言ってた。」



侑隼…







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