君に届け
中から出て来たのは、左手に包帯を巻いた池澤と…
「お大事にして下さい。」
笑顔が爽やかな、白衣を着た若い男の人だった─
「はいはい…」
何故か迷惑そうに男の人に返事をする池澤。
知り合い…?
訳がわからず、あたしと綾芽は顔を見合わせる。
「ったく、大袈裟なんだよ。こんなに包帯巻いて…」
「はぁ…相変わらずだよね、憲兄ぃ。それより、ナイフ握りしめる奴がどこにいんの?全く…」
男の人は、池澤のことを憲兄ぃと呼んだ。
ただの知り合いじゃない…
「池澤…この人は?」
そう確信したあたしは、池澤に聞いてみた。