君に届け
「なに?」
あたしが涼哉さんの観察を続けていると、視線に気付いたのか涼哉さんが顔を上げた。
「えっ…いや、あの…何でもないです。」
「ふぅ〜ん…」
怪しげな目を向けられ、あたしがどうしていいか迷っていると…
「葛城先生、急患です!すぐに来て下さい。」
慌てた様子の看護師さんがやって来て、涼哉さんを呼んだ。
涼哉さんはお医者さんなんだし、『先生』って呼ばれるのは当たり前のことだけど…
なんか頭が混乱する─
「わかった、今行く。憲兄ぃ、後よろしくな!!」
涼哉さんはそう言って笑顔を見せると、看護師さんと一緒に走っていった─
「はぁ…邪魔者もいなくなったし、そろそろ帰るか!」
「うん。」
「そうだね…」
こうして、嵐のように去って行った涼哉さんの後ろ姿を見送った後、あたしたちは病院を後にした。