君に届け
「ったく…」
呆れたように池澤を見る真先輩という人。
「こいつは?」
「あっ…こいつは新一年生で、諸事情で入学式に出れなかった、幸村って奴です。」
諸事情…?
まるっきり嘘じゃん。
「諸事情…?」
真先輩という人も、あたしと同じ疑問を持ったみたい。
不思議そうな顔をして、あたしを見た後、池澤に問いかける。
「あぁ…最初は出ようと思ってたんだけど、途中で体調悪くなったんだよな?」
俺に合わせろ…
池澤のそんな声が聞こえた気がして、あたしは頷いた。
「今はだいぶ落ち着いて…だから、こうやって連れて来ました。」
「で、イケはなんでこの子と一緒にいるんだ?」
「偶然見かけたんで…中庭で体調悪そうにうずくまってる幸村を。」
池澤は、深刻な顔で真先輩に語る。
まるで、本当にあったことのように…