君に届け
倉庫には当たり前だけど、誰もいなかった。
もうここに来ることもないだろうな…
「幸村、何やってる?早く帰るぞ〜!!」
倉庫の前で立ち尽くしていたあたしを呼ぶ池澤。
「あ…うん!」
池澤に返事をして、あたしはもう1度倉庫を見ると、走って池澤と綾芽が待つ所へ行った。
車に乗りこみ、まずは綾芽を家まで送って行くことになった。
「穂波はいいなぁ…」
「ん?なにが?」
綾芽は、突然そんなことを呟いた。
「自分を命かけてまで守ってくれる人がいて。羨ましいよ…」
綾芽はそう言うと、池澤の方を見た。
当の池澤は、ミラー越しに後部座席に座るあたしたちをチラっと見ただけ…
「そうだね。てかさ、綾芽はいつから気付いてたの?あたしたちのこと…」
「えっとね…多分最初から。穂波と先生、妙に仲良いもん。気付くよ。」
綾芽は笑いながらあたしの肩を叩いて言った。