君に届け
「学校に言おうとか、思わなかった?」
「うん…私はそれより悪いことしてたし、先生が穂波の側にいてくれるなら、安心出来るかもって思ったんだ…だから言わなかった。」
綾芽は遠くを見るように目を細めて言った。
「確信した今でも、学校サイドに言おうとかは思ってないから…安心して?」
「うん。」
「他に穂波たちのこと知ってる人はいるの?」
「あと1人だけ。葛城先生が知ってる…」
侑隼からスパイの話を聞いた時、一番に疑っちゃったんだけどね…
また謝っておかないと。
「へぇ〜、葛城先生が知ってるって、なんか意外。」
「そうかな…?あたしは葛城先生に弟がいたことの方が意外だけどね。」
その後も、あたしと綾芽は他愛もない話を続けた。
「あ、もうすぐだ…先生、ここを右に曲がって。」
ようやく着いた綾芽の家は、学校からだいぶ離れた一軒家だった。