君に届け
誰だろ…?
そう思いながらも、あたしは携帯を取り出した。
【着信 お母さん】
ディスプレイに表示された発信者は、お母さんだった─
慌てて通話ボタンを押す。
「もしもし…」
『あっ、穂波?今どこにいるの?』
携帯を通じて聞こえてきたお母さんの声は、すごく嬉しそうだった。
「今?池澤の車ん中…」
『池澤って彼氏さん?ちょうどいいわ。彼氏連れて今すぐ家に帰って来なさい!』
「えっ…どういうこと?」
『いいから。とにかく待ってるからね。じゃ!!』
上機嫌なお母さんは、そう言うと一方的に電話を切ってしまった─
「幸村、どうした?」
「ん…お母さんから電話。池澤連れて家に帰って来なさいだって…」
訳がわからないまま、あたしは池澤に話した。