君に届け
「穂波〜!!」
車から降りてすぐ、お母さんの声が聞こえた。
「お母さん…一体何なの?」
「あら、あなたが池澤先生?いつも娘がお世話になってます…」
「あ…いえ、別に。世話なんてしてるつもりは…」
あたしの質問を軽く無視して、池澤に嬉しそうに話しかけるお母さん─
ちょっと…
「それより先生、本当にこんな子でいいのかしら?」
「こんな子なんて…穂波さんはいい子ですよ。それに、至らない点なら僕の方が多いくらいです。」
『僕』って…
池澤らしくない。
態度の切り替えは尊敬出来るくらい早い…
「そうかしら〜?」
あたしが誉められたのに、お母さんが得意そうな顔してる…
「だから!!お母さん、何があったの?」
これ以上待っていても会話が終わりそうにない。
そう判断したあたしは、声を上げて言った。