君に届け



「穂波〜!!」



車から降りてすぐ、お母さんの声が聞こえた。



「お母さん…一体何なの?」



「あら、あなたが池澤先生?いつも娘がお世話になってます…」



「あ…いえ、別に。世話なんてしてるつもりは…」



あたしの質問を軽く無視して、池澤に嬉しそうに話しかけるお母さん─



ちょっと…



「それより先生、本当にこんな子でいいのかしら?」



「こんな子なんて…穂波さんはいい子ですよ。それに、至らない点なら僕の方が多いくらいです。」



『僕』って…
池澤らしくない。



態度の切り替えは尊敬出来るくらい早い…



「そうかしら〜?」



あたしが誉められたのに、お母さんが得意そうな顔してる…



「だから!!お母さん、何があったの?」



これ以上待っていても会話が終わりそうにない。



そう判断したあたしは、声を上げて言った。








< 196 / 282 >

この作品をシェア

pagetop