君に届け
お父さん
あり得ない…
あたしは一瞬、自分の目を疑った。
なんで…?
「穂波…久しぶりだな。元気にしていたか?」
優しい声は変わらない─
あたしが唯一、心を開いていたお父さん…
「うん…」
会えて嬉しいのに、返す言葉が見つからない…
「あなたが池澤先生ですか?洋子から聞きました。娘がお世話になってるようで…」
洋子はお母さんの名前。
そして、言ってることもさっきのお母さんの言葉とよく似てる。
「いや…だから僕は、穂波さんを世話してるつもりはないんですけど…」
池澤も同じようなことを聞かれて困ってる。
「はは…でも、お礼は言わせて下さい。穂波と洋子が仲直りしたのは、あなたのおかげでしょう?」
「いえ…僕はただ、穂波さんの背中を少し押しただけで、何もやってません。」
池澤はそう言って、あたしの方を見た。