君に届け
話し終えたお母さんは、池澤の左手の怪我に気付いた。
「えっ…と、これは…」
話し辛そうに言葉を濁す池澤。
「あたしが悪いの…」
「えっ?」
「穂波、どういうことだ?」
お父さんとお母さんは、ほぼ同時に反応した。
「幸村…お前が悪い訳じゃないだろ?」
「いいの。あたしに隙があったから、侑隼に付け入られた。どう見たってあたしが悪い…」
あたしは反論しようとする池澤を制し、2人に池澤の怪我の理由を説明した。
あたしを守ろうとして、池澤が怪我をした。
その事実を─
「…そんなことがあったのか─」
言葉を失うお母さんの代わりに、お父さんが答える。
「うん…でも、池澤がいなかったら大変なことになってたかも知れない。」
「そうだな…先生、穂波を守って下さってありがとうございました…」
お父さんはそう言って、池澤に深々と頭を下げる。