君に届け
2人きり◇穂波side◇
「じゃあ、私も…」
「えっ?お母さんもどっか行くの?」
このままじゃ、池澤と2人きりになるじゃん…
嫌ではないけど─
「えぇ。前の仕事場に退職届出しに行くのと、次の仕事の面接があるのよ…」
「そうなんだ…頑張ってね、お母さん。」
「ありがとう、穂波。じゃあ先生、穂波のことよろしくお願いします。」
「はい、わかりました。」
お母さんはそう言って、あたしと池澤を残して家を出た。
本当に2人きりだぁ…
「はぁ〜、疲れた。」
池澤はその場に座り込み、壁にもたれかかる。
「疲れたって、猫被ってたからでしょ?『僕』とか『穂波さん』とか…普段言わないのに無理するから。」
あたしは、池澤の隣に座り込んで言った。
「猫被りは酷いなぁ…俺だって真面目に言う時ぐらいあんの!」
でも猫被りだよね…?