君に届け
そう思ったあたしは、じっと池澤の顔を見ていた。
「…………」
あたしの視線に気付いて、こっちを見つめる池澤。
しばらく見つめ合う。
自分で池澤の隣に座っておいて言うのは何だけど、距離が近い…
「なに…?」
「あ…いや、別に何も…」
耐えきれなくなって、あたしは視線を反らす。
「幸村…」
「ん?」
「数学の教科書…ある?」
いきなり何を言い出すのかと思ったら、数学の教科書って…
「あるけど…なんで?」
疑問に思って、あたしは池澤に尋ねた。
「ヤバいから…」
「えっ…?」
ヤバいって何が?
「これ以上は無理…今、俺どうかしてるから─」
「わかった。ちょっと待ってて…」
わかったとは言ったけど、イマイチ理解は出来ない。
とりあえずあたしは、数学の教科書を取りに部屋へと向かった。