君に届け
「はい、教科書。」
「…ありがと。」
部屋から戻ったあたしは、池澤に教科書を手渡す。
……………
教科書に視線を落とす池澤をしばらく見つめていたけど、やっぱりわからない…
何がヤバいのかな?
どうかしてるからって言ってたけど…
見る限りでは、普通の池澤と何も変わらない。
「ねぇ、池澤…?」
「えっ…?な…なに?」
明らかに動揺してるんですけど…
「何がヤバいの?池澤、いつもと変わらないじゃん…」
あたしはまた、池澤の隣に座って聞いてみた。
「幸村、ごめん…俺から離れてくれる?」
「……?」
意味わかんない…
「幸村はまだ高1だから…それに、俺は仮でも教師の立場。今はまだ…」
やっとわかった。
そういうこと…
「でも、あたしは今でも別にいいけどな…」
「本気で言ってんの…?」
「嘘なんか言わないよ。でも、池澤頑張ってるし…今はこれだけにしとく♪」
そう言って、あたしは池澤の唇にキスをした。