君に届け
気晴らしに、さっき幸村に持って来てもらった数学の教科書を手にした。
2・3ページ見たあたりで手を止める。
これでもダメ…か。
数学の教科書を閉じ、俺はキッチンにいる幸村を見た。
俺…幸村のこと、見くびってたのかも知れないな。
心のどこかで、まだまだ子供だって思ってた。
でも、どうやらそれは間違ってたみたいだ…
幸村は俺が思う以上に、大人なのかもな─
それとも、俺がまだまだ子供なのか…
俺はその場から立ち上がり、キッチンへと向かう。
「幸村…」
「え…なに?」
「俺もなんか手伝う。やること言って?」
「…じゃあ、野菜切って。みじん切りだよ?」
「了解。」