君に届け
訳がわからないまま、あたしは池澤の側に行く。
「座れよ…」
そして、腕を引っ張られて隣に座らされた─
「何…?」
「俺…昔からなんだけど、素直になれないんだ─」
いきなり何…?
「意気地なしだし、カッコ悪いだろ…?俺。」
池澤はそう言うと、数学の教科書を閉じた。
素直になれないことが、カッコ悪いことに繋がる…?
あたしはそうは思わない。
だって、あたしも素直になれてないから…
言えないもん
今思ってることすら…
「カッコ悪くなんかない。」
「幸村…?」
「もっと自信持ってよ。あたし…今の池澤は大っ嫌いだからね!」
そう言って、あたしは池澤に背を向けた。
お互いしばらく無言で、静かな時間が2人の間を流れる…
「ごめん…幸村。」