君に届け
あの時の手の怪我は、だいぶ良くなった。
今では包帯も外れてるし、痛みもないみたい。
傷痕は残ってるけど…
そのことに関してあたしが謝ると、池澤は軽くあたしの頭を叩いてこう言った。
『これは大事な傷痕。もしこれから先、弱気になったりしたら…これを見て思い出す。あの時、俺がやったことと、俺の気持ちを…』
自分を戒める為に必要だから、お前は謝るな…
こう言われた時、あたしは嬉し過ぎて思わず池澤に抱きついてしまった。
自分のことを一番大事に考えてくれる人がいる。
この幸せは…絶対に手放したくない。そう思えた─
「…幸村!!」
「…え、は…はい?」
「ボーッとしない!期末も近いんだから、授業は真面目に聞くこと。いいな?」
「はい…」
考え事をし過ぎた…
池澤に注意され、あたしは板書に集中した。