君に届け
「用事はないの。近くに来たから顔見ようかな…って思ってさ。」
志帆さんは、ここから少し離れた違う町にある実家に住んでいるらしい。
池澤は実家にはあまり帰らないみたいだけど…
「どう?仕事頑張ってる?」
「あぁ…まぁな。」
志帆さんに聞かれ、池澤は曖昧に答える。
恥ずかしいのかな…?
「そう…教師になるのって、昔から憲介の夢だったもんね─」
「うん…」
池澤が志帆さんの言葉に返した返事は、何故か暗かった─
そして、あたしを見る。
「………?」
「俺の今の学校での立場は臨時だし…」
あたしに何かを言おうとしてるのはわかる。
でも…様子がおかしい。
「…穂波ちゃん。話、聞いてくれる?」
志帆さん…?
訳がわからないまま、あたしは頷いた。
「ありがとう…詩音、ちょっと隣のお部屋行っててくれる?」
志帆さんは詩音ちゃんを隣の部屋に行かせ、あたしの前に座った。