君に届け
あたしの言葉を遮り、池澤はそう言った。
「え……?」
「わかってたのに…ずっと隠してたから。」
それはきっと、転勤の話だとあたしは悟った。
「楽だと思った。このまま隠して、最後の最後で言うのが楽だと思ってた─でも、そうじゃなかった。隠し事するって、想像以上に辛いんだな…」
そう言って下を向いた池澤の手は震えていた。
あたしは池澤の隣に座り、そっとその手を握った。
「……?」
「確かに悲しかったよ。こんなに近くにいるのに、何も教えてもらえなかったことはね…でも、」
あたしは…こう思う。
「転勤なんて関係ない。あたしたちは、このままずっと変わらないよ─」