君に届け
やっぱりか…
教室の後ろのドアから、池澤が姿を現した。
「矢野に気付かれた時は焦ったけどな…」
「何か用事?」
鞄を持って、池澤の方を向いたあたしは聞く。
「いや…お前これから予定あるか?」
「え…?」
「詩音が…今日俺ん家来るんだ。お前と遊びたいって言ってる。」
詩音って…
志帆さんの娘さんだよね─
「前に会った子?」
「あぁ…」
まぁ、予定はないし…
「いいよ。」
あたしはそう答え、池澤がいる方に歩いて行った。
「まだ仕事あるんでしょ?先行くね…」
そう言っても無言の池澤は、視線を教室の中へと泳がせた。
気まずい…