君に届け
『イケは単純だから』
葛城先生は最後にそう言って、あたしを見送った。
単純…か。
確かに初めて出逢ったあの時もそうだった。
教訓と言うには大袈裟だけど、あれを利用すれば…
池澤の家に着いた後も、あたしはそんなことを考えていた。
ピーンポーン…
ちょうどその時、インターホンが鳴った。
「はぁ〜い!!」
あたしは返事をして、素早くドアへと向かう。
「あっ…志帆さん。」
訪ねて来たのは、池澤のお姉さんの志帆さんだった。
「こんにちは。穂波ちゃん、また会ったね。…あれ、憲介は?」
「まだ…帰ってないです。」
「そう…憲介から話は聞いてる?」
詩音ちゃんのことかな?
そう思い、あたしは小さく頷いた。